さて4月はRadio4で、ライヴが極めて珍しいフランス六人組(ルイ・デュレは不参加)の合作劇音楽「エッフェル塔の花嫁花婿」(04/01、スーストロ指揮オランダ放送フィル)に始まります。珍曲の放送が多かったのがこの春先の特徴ともいえ、同じRadio4でグリーグの交響曲ハ短調、レントヘンのチェロ協奏曲(04/29、エリ・クラス指揮オランダ放送室内フィル)、オスロ・フィル定期でプロコフィエフの交響曲第4番(05/05、ノセダ指揮)、リエージュ・フィルも定期でデュリュフレのレクイエム(05/06、ヘック指揮)、NDRはアーカイヴ放送でメンデルスゾーンの交響曲第2番「讃歌」(05/08、フロール指揮)、美しすぎる「楽園とペリ」(06/11、Musiq3―ハワード・アーマン指揮MDR響)などがありました。メンデルスゾーンと「楽園とペリ」以外はライヴで聴いたことはないくらい珍しいものばかり。
今年のバイロイト音楽祭はティーレマン指揮の新演出「指環」が大きく期待されていましたが、すでに3月にはDRでシェーンヴァント指揮による「指環」の全曲放送や、SRP2でも「指環」ツィクルスからビュール指揮「ヴァルキューレ」、プロムス2005のパッパーノ指揮コヴェント・ガーデン王立歌劇場、ドミンゴとW・マイアーによる「ヴァルキューレ」(04/19、Notturno)など、ワーグナー祭りの前哨戦はすでに始まっていました。この時期の最大のハイライトだったのは、やはりエッシェンバッハ指揮パリ管によるツィクルス上演の放送(04、Latvija3と05、NRK)です。エッシェンバッハの音楽は悠久の大河の流れを思わせ弛緩もなく、キャストもなかなかに豪華で、特にフォルカー・フォーゲルのミーメが実に秀逸。非常にレヴェルの高い上演でした。ハンガリーではなんとシモノフ指揮「マイスタージンガー」(05/21)なんて珍品もあり、アダム・フィッシャー指揮「パルジファル」(06/17、いずれもBartok)はバイロイトの予習以上に美しい演奏でした。
また、ツィクルスとしては、オラモ指揮フィンランド放送響のシベリウス・ツィクルスも特筆されるべき名演でした。5月にFRSO(本拠地ヘルシンキ)で、6月にはNRK(ベルゲン音楽祭)と流れ、いまだに各局でリピート放送もされています。FRSOの128kbpsストリーム放送も、フィンランド放送響の定期生中継時のみながら、このシベリウス・ツィクルスから始まったものです(05/05、フィンランド国会100周年コンサート)。
各局のアーカイヴ放送が、プログラム的にさらに充実したのもこの春で、驚きの連続。まずNotturnoのジョルジュ・エネスコ・フィル特集ではバルビローリ指揮による「海」、ベートーヴェン7番ほか(04/06、Notturno)、不遇の奇才コンスタンティン・シルヴェストリ指揮、アラウのピアノによるブラームス2番ほか(04/20)、若い頃のメータ指揮ブルックナー7番(06/29)。6月には5日連続でヘンリク・シェリング特集も。他局ではヴィリー・ボスコフスキーのハンガリー客演(04/21、BartokRadio―ラーンキとのモーツァルト・プロ)、ハインリヒ・シフ指揮スウェーデン放送響(06/11、SRP2)エーリヒ・ベルゲル指揮ハンガリー国立管(05/06、Bartok―レーガーなど)。また、Radio4とNDRはそれぞれ比較的最近のアーカイヴ放送を流してくれました。Radio4ではアルノンクールの「天地創造」、ベートーヴェン・プログラム(05/07と06/10、いずれもコンセルトヘボウ)、NDRではランニクルズ指揮NDR、ダライマンとW・シュミット(06/20、「ヴァルキューレ」第一幕ほか)が特に素晴らしかった。
特にすごかったのが4月10日。ドラティ指揮ハンガリー国立管の「第九」(Bartok)、スヴェトラーノフ指揮スウェーデン放送響のマーラー5番(SRP2)、ケーゲル指揮ブダペスト・フィルのベートーヴェン5番(Bartok)と重なり、驚愕。
さらにABCも過去のオペラ・ライヴの放送シリーズが始まり、ボニング指揮、ジョーン・サザーランドの「ホフマン物語」(06/04)、グッドールの弟子マーク・エルダー指揮の英語版「ラインの黄金」(06/11)、チラーリオ指揮リザネク主演の「トスカ」(06/18)。
ヘルベルト・ブロムシュテットもこの時期から集中的に放送され、NDRで「田園」と「不滅」(06/06、北ドイツ放送響)のアーカイヴ放送、定期客演の生中継でシューベルトの大ハ長調(05/16、北ドイツ放送響)とメンデルスゾーンの「エリア」(05/20、スウェーデン放送響)と立て続けに流れます。
Radio4では、毎年行われるコンセルトへボウでのピアニストのシリーズも魅力的で、プレトニェフアンスネスエンリコ・パーチェティル・フェルナーと、いずれもそれぞれが個性的で素晴らしいリサイタルを聴かせました。
このほか印象的なのは、ボレイコ指揮ユンゲ・ドイチェ・フィルとジャニーヌ・ヤンセン(04/05、DeutschlandRadio―プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番とショスタコーヴィチ7番)、マルセロ・アルヴァレスのリッカルドが剛柔兼ね備え圧倒的に素晴らしいパッパーノ指揮コヴェント・ガーデン王立歌劇場の「仮面舞踏会」(04/20、NRK)、ギュンター・ヘルビッヒ指揮ザールブリュッケン放送響(04/25、DeutschlandRadio―モーツァルト後期三大交響曲)、いずれもネーメ・ヤルヴィの代役としてショスタコーヴィチ6番で気を吐いたニコライ・アレクセーエフ指揮コンセルトへボウ管(04/30、Radio4)とミハイル・ユロフスキ指揮ゲヴァントハウス管(05/06、DeutschlandRadio)、巨匠マルティン・トゥルノフスキー指揮ブルノ・フィル(05/12、Klara―「新世界から」ほか)、モネ劇場でのアットホームな盛り上がりで聴かせたトーマス・アレンのバリトン・リサイタル(05/15、Klara)、刺激的な響きが実に魅力的だったパーヴォ・ヤルヴィ指揮ドイツ・カンマーフィルとパトリツィア・コパチンスカヤ(05/15、DeutschlandRadio―ベートーヴェン8番、ヴァイオリン協奏曲)、ひさびさの古巣への復帰となったチョン・ミョンフン指揮ザールブリュッケン放送響(06/03、DeutschlandRadio―「田園」とショスタコーヴィチ5番)、アムステルダム音楽劇場の「ムツェンスク郡のマクベス夫人」(06/04、Radio4―マリス・ヤンソンス指揮コンセルトへボウ管)、ヒュー・ウルフ指揮フランクフルト放送響(06/10、NRKほか―マーラー2番)、アンコールで指揮者とソリストの四手ピアノのハンガリー舞曲という趣向に唸らされたロバート・スパーノ指揮アトランタ響とブロンフマン(06/09、WUGA―英雄の生涯、ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番)、図らずも追悼放送のようになった岩城宏之指揮メルボルン響(06/14、ABC―現代曲とサン=サーンスの「オルガン付」)。
この時期は魅力的なプログラムが多く、Net Transportが同時に六つの放送局ストリームを録音したり、真剣にHDの増設を検討するなど、パソコンに多大な負担をかけてしまいました。
今年のクラシック系ネットラジオの回顧を4回シリーズでお送りします。
莫大な量なので、三ヶ月ごとにwikiの番組表を参照しながら心に響いた演奏の回顧とします。年内には終わらないと思いますが・・・

まずはマンフレート・ホーネック客演で、クライバーにも比肩しようかというデンマーク王立歌劇場の「こうもり」(01/01、DR_P2)で華麗に開幕した2006年でした。スコウフスも達者な歌で、この暮れから年明けにかけて今度はウィーンでも歌うようです(放送有り)。また、ホーネック旋風は王立オケへの客演にも飛び火、強烈な爆演のドヴォルザーク8番(01/04、DR_P2)を聴かせ度肝を抜きました。
以降1月はモーツァルトの命日に合わせ様々な演奏会が組まれ放送されました。20日過ぎなどはほとんど9割がたモーツァルト関連の放送で予想していたとはいえ、やはり食傷。15年前もそんな気分になったなあと、妙な感慨を持ちました。
中でも素晴らしい企画だったのはヴァーシャリ指揮ハンガリー放送響ダウスゴー指揮デンマーク国立放響によるツィクルス。前者はオーソドックスな演奏会スタイルのプログラムで五回のシリーズ、後者はピアノ協奏曲に重点を置いた面白い組み合わせ。ピアニストも多彩でアックス、ハフ、マリング、ポヒョネン等々、飽きさせませんでした。また、この一年を通してもいまだに素晴らしかったといえるのが、EBUが2月に生中継したワルシャワのマレク・トポロフスキ指揮コンチェルト・ポラッコ(02/21、NRKほか)。いまどき珍しくテンポをガクッと落とした演奏で、各声部磨き抜かれた音を奏でており出色の美しさ。この見事な交響曲第34番は忘れられないものです。
また、2006年は各地の放送局が次々に高音質化したのも重要なトピックのひとつでしょう。この3月までにNL_Radio4(オランダ)DeutschlandRadio(ドイツ/ベルリン)NDR(ドイツ/ハンブルク)ORF(オーストリア)と立て続けにビットレートが上がり、私のテンションも上がる一方。ただしなぜかORFだけは、ほんの二週間ほどで元の64kbpsに戻り、いまだ復活しません。中ではタイミングよくウィーンに来演したフェドセーエフ指揮モスクワ・チャイコフスキー響(02/27、ORF)が出色の出来。
新進指揮者では、ヤニク・ネゼト=セギン指揮フランドル放送管(01/04、Klara―ヨハン・シュトラウスほか)、アラン・ブリバエフ指揮ハンガリー国立フィル(02/29、BartokRadio―チャイコフスキー3番)、キリル・カラビッツ指揮ベルリン・ドイツ響(03/22、DeutschlandRadio)、ピエタリ・インキネン指揮フランクフルト放送響(03/25、NRKなど―ヒュー・ウルフ代役でブラームス4番ほか)、エイヴィン・グルベリ・イェンセン指揮フランス国立管(03/28、Klara―ショスタコーヴィチ6番ほか)と、いずれも好演揃い。特にブリバエフの熱血チャイコフスキーは、すさまじい演奏でした。忘れてはならないのが07年からスウェーデン放送響の監督に就任するダニエル・ハーディングで、1月の顕現日コンサートを指揮。ガラ・コンサートなもののターフェルとの「夕星の歌」は名演奏でした。いよいよ来年早々に定期の指揮台に立ちます。
冬季はまた、ネットラジオ聴いててよかったなあ、といえるほど懐かしい指揮者も目立っています。1月と3月に意外な頻度で登場したポーランドの名匠ヤン・クレンツ、3月にモントリオールへの客演が流れた元シェフのフランツ=パウル・デッカー(!)、ミュンヘンのムジカ・ヴィーヴァに登場したホセ・セレブリエールもひさびさ。フィンランド楽壇の大立者イョルマ・パヌゥラ(03/22、Radio4―レンミンカイネン組曲ほか)も珍しく、前プロでやっていたアルマ・マーラーの歌曲集は録音もしているようです。Radio4は高音質化に伴い、クラウス=ペーター・フロール(02/21、オランダ放送フィルとの力業の「カルミナ・ブラーナ」)、マルク・スーストロやジェラール・コルステンもしばしば登場しました。
アーカイヴ放送が充実しているのもネットラジオのありがたさで、マルケヴィチ(Notturno―第九、ブラームス・プロ)、マタチッチ(Bartok、聖母マリアの夕べの祈り)、ヤーノシュ・シュタルケルヴァント(Notturno―01年プロムスでの「未完成」とブルックナー9番)、ヤーノシュ・フェレンチーク(Bartok―ブラームス・プロ)。特に驚いたのがアルヴィド・ヤンソンス(03/23、Notturno―ブカレストでのショスタコーヴィチ10番)で、ライヴの少ないこのひとのタコ10は聴けるだけで感謝というもの。しかし旧東欧圏での録音が目立つなあ。割と最近亡くなったヴィオッティや、ベルティーニ(03/04、DRk―壮絶なチャイコフスキー5番)もありました。
このほか印象的な放送としては、尾高忠明指揮フランクフルト放送響(01/14、NRK―マーラー4番ほか)、ヤノフスキ指揮ベルリン放送響(01/20、プラハの秋客演の「英雄の生涯」)、ビルギット・ニルソンの追悼演奏会のニーナ・ステンメとセーゲルスタム指揮スウェーデン放送響(02/04、SRP2―「トリスタン」から前奏曲と愛の死ほか)、いぶし銀イヴァン・モラヴェツのウィグモア・リサイタル(02/28、Radio4)、ローランド・ペンティネンのピアノ・リサイタル(03/04、SRP2)、モネ劇場のプッチーニ「ラ・ヴィッリ」(03/12、Klara)、ボレイコ指揮デンマーク国立放送響(03/17、DR_P2―ドヴォルザーク7番ほか)、70歳記念コンサートのねっとりと歌うブルックナー7番が実に素晴らしかったインバル指揮フランス放送フィル(03/18、DeutschlandRadio)、演奏会自体が大盛り上がりだったシナイスキ指揮スウェーデン放送響(03/20、NRK―「ばらの騎士」ほか)、現代作曲家への委嘱小品を連ね冥王星付き「惑星」で締めるプログラミングが秀逸だったラトル指揮ベルリン・フィル(03/20、DeutschlandRadio)、ジェルジ・リーナーのヴァイオリンとイローナ・プルーニのピアノによるゴルトマルクやコルンゴルトの室内楽(03/20、Bartok)も隠れ名曲紹介で○。NDRではスラトキン客演の颯爽としたドヴォルザーク6番が見事でした(03/21)。
2006年初頭はモーツァルト・イヤーに始まり、徐々に春先からワーグナー祭りの様相を呈してきました。これは今年ワーグナー関係のソフトが多く出たのとなにか関係はあるのでしょうか。その開幕を飾った大野和士指揮モネ劇場の「さまよえるオランダ人」(01/08、Musiq3)も実に素晴らしかった。ネットラジオではありませんが、大野では1月7日の新日本フィルとのショスタコーヴィチ4番の実演も大変な名演でした。ま、ワーグナーについては次回春編以降で。