2008.02.14 追悼 市川崑
昨日13日未明、映画監督市川崑さんが亡くなりました。92歳でした。

全く対照的な作風とはいえ、小林正樹と市川崑は最も贔屓の映画作家でした。
彼の作品はまず先に映像云々で語られることが多かったように思います。それでいて人間の寂しさや孤独、不安といったものをそくそくとあぶり出していく、繊細な作風の方だったと思います。
独特のアングルやカッティングを多用し、一見奇抜な方法の語り口で、人物の揺れさざめくような情感表現を的確に表出していた名監督です。

お歳がお歳でしたから大往生と言えるにせよ、かなわぬ夢ながらこのひとの演出する「トリスタンとイゾルデ」を観たかった。きっとドライにして燃え上がる、青白い炎のような「トリスタン」を創ってくれたのではないかとしょうもない妄想をしてしまいます。

「吾輩は猫である」(1975)のバッハや、「東京オリンピック」(1965)の黛敏郎の仰々しい音楽の使い方も忘れ難いのですが、「おはん」(1984)での、日本のコスチュームプレイでマーラーのアダージェットを使うという斬新さが強く印象に残っています。

代表作はやはり「おとうと」(1960)でしょうか。これからビデオを引っ張り出して故人を偲びたいと思います。
http://oe1.orf.at/inforadio/73053.html?filter=5(ORF)
http://www.playbillarts.com/news/article/6030.html(Playbill Art)

ギリシアのバリトン歌手コスタス・パスカリスが9日、亡くなりました。77歳でした。
1960〜70年代に主に活躍し、中でもウィーン国立歌劇場と縁が深く、600回以上の出演を誇っています。反してMETには十数回程度しか客演していないようです。
手持ちの彼のライヴ録音はそれほどありませんが、いずれも充実した名演奏が揃っています。特にジュリーニとの「リゴレット」は白熱の指揮に渡り合っての絶唱です。フォルムを崩さない端正な歌で、力強さも十分に感じられます。

ご冥福をお祈りいたします。

1966年11月 ヴェルディ:リゴレット(リゴレット) ジュリーニ指揮フィレンツェ五月祭管
 スコット、パヴァロッティ、ラゲッツァ、ワシントン
1977年3月 プッチーニ:トスカ(スカルピア) エレーデ指揮ウィーン国立歌劇場
 マルトン、アラガル、ブンガー、ウズノフ
1978年7月 ヴェルディ:オテロ(イヤーゴ) サンティ指揮パリ・オペラ座管
 ドミンゴ、M・プライス、ベルビエ、ラウベンタール
()内は役名
http://www.vlaamseopera.be/articledetail.orb?doc=4746
(フランダース歌劇場)

スイスの職人指揮者、シルヴィオ・ヴァルヴィーゾが1日、亡くなりました。
このひとの本領はやはりオペラでしょう。ライヴでいくつかありますが、モーツァルトやロッシーニ、ベルカントものを特に得意にしていた印象があります。
演奏会でもN響に客演したことがあり、ドヴォルザーク8番などを振っていましたが、評価はあまり芳しくないようです。
バイロイトには69年から登場、「オランダ人」「ローエングリン」「名歌手」を指揮、「名歌手」はライヴ収録されフィリップスから出ていました。
個人的には後々触れますが、バイエルン国立歌劇場を振った76年頃の「セビーリャの理髪師」の生き生きとした躍動が、ドイツ語上演ながらプライの名唱とともに忘れられません。
最近も春先にフランダース歌劇場とのドニゼッティ「マリア・ストゥアルダ」が、ネットラジオ(ベルギーのKlara)で流れたばかりで、まだまだ元気かな、と思った矢先のことで、残念です。
ご冥福をお祈りいたします。
http://www.metoperafamily.org/operanews/news/pressrelease.aspx?id=1273

20世紀後半の偉大なバリトン歌手、トーマス・ステュアートが亡くなりました。
私にとっては、やはりワーグナーでの印象が強いひとでした。
暗く重い、悲劇的とさえいえる独特な声質で、最愛のグンターでした。
バイロイトでのベーム&ヴィーラントの「指環」プロダクション(1965-)における、「黄昏」でのヨーゼフ・グラインドルとの絶妙なコンビぶりは忘れがたいものがあります。
また、音がよい60年代のワーグナーということで珍重した、CSで以前放送されたショルティとコヴェントガーデンのプロムスのライヴ、「黄昏」第三幕にもグンター役で登場しています(第三幕のグンターはあまり目立ちませんが)。こちらはゴットロープ・フリックとの組み合わせでしたが、史上最も重いグンターとハーゲンではないでしょうか。ケンペ&ヴォルフガングのプロダクション(1960-)でもこの両者は聴くことができます。
http://www.swissinfo.org/eng/front/detail/Switzerland_loses_distinguished_conductor.html?siteSect=105&sid=7083405&cKey=1158774948000

スイスの名指揮者、アルミン・ジョルダンが亡くなりました。
9月15日に地元バーゼルで「三つのオレンジへの恋」を指揮中、倒れたそうです。
ちょっと前にネットラジオ(Klara)でスイス・ロマンドとの今年3月の演奏会を録音したばかり。スコウフスを迎えてレハールのオペレッタ、ワルツからの曲とマーラーの「さすらう若人」と「花の章」という結構奇抜なプログラム。
ジョルダンの思い出、というと、87年の来日公演がやはり思い出されます。東京文化会館でのアルゲリチを迎えてのオール・ラヴェル・プロは、録画したビデオが劣化して今では見れませんが、ラ・ヴァルスやボレロの鮮烈な名演奏は忘れられません。
その後も海外テープで「叙情交響曲」やショスタコーヴィチ10番なども聴けましたが、あのラヴェルの記憶には及びませんでした。
CDにもマーラー3番など録音しているところをみると、意外にレパートリーも広く、大曲志向もあったひとのようです。
WOWWOWで以前放送した、「牧神」「ダフニス」、デュティユーなどで故人を偲びたいと思います。