Marek-Janowski-3.jpg
マレク・ヤノフスキ

もう3年前の年明けだったと思いますが、オペラキャストさんのサイトを発見して、ドイチュラントラジオから流れてくるストリームを初めて聴いたときの感激は忘れられません。
当時はまだドイチュラントラジオも.oggの高ストリームはなく、.wmaの32kbpsという非常な低ビットレートでしたから、音質は歪み、水道管から出てくるような「ジョロジョロ」というノイズと一緒に聞こえてくる貧相な代物だった訳です。
それでも日本では放送されることは(おそらく)ないであろう、ベルリン放送響の定期、首席指揮者ヤノフスキによるメインプロのブルックナー9番の響きには、涙が出るほどの嬉しさを覚えたものでした。

すでに70も手に届こうかというマレク・ヤノフスキ(1939-)とは、NHK-FMのエアチェックの頃からの長い付き合いです。
彼を世界的に有名にしたオイロディスク=DENONの「指環」全曲から、ごくたまにNHK-FMでも彼の指揮した演奏会やオペラが流れるようになりました。1980年代の半ばだったでしょうか。
どちらかというと放送ではコンサートの頻度が高く、当時の手兵フランス国立放送フィルとの演奏会がほんのいくつか日本でも流れたことがあり(ブルックナー5番/1990など)、来日時の演奏もフランス物が中心でしたが集中的に放送されました(ラヴェル、「オルガン付」、シューマン「ライン」など/1993)。N響へも1986年に初客演を果たし、いまのところ1998年まで数度に渡り登場しています。

手元にN響初客演時のブレンデルとの「皇帝」があります。放送フィルとのフランス物も録音していますが、まだこの頃の印象では、手堅い、職人肌の何でも屋さんかという漠たるイメージしかありませんでした。
1990年のバスティーユ・オペラでのブルックナー5番にしても、木管の独特な響きや、柔らかい全奏から感じられる印象は、ヤノフスキではなくフランスのオケのブルックナー―しかしかなり面白い―という方が正直強かったものです。
余談ですが、このときのブルックナーは、「指環」全曲上演と並ぶ国立放送フィルとの大仕事、ブルックナー・ツィクルスのひとつだったそうです。当時の「レコード芸術」海外楽信では、パリの木下健一さんによるレポートで、ヤノフスキと放送フィルの大活躍をよく報じていましたが、その頃の日本では結局彼らの活躍を「線」ではなく「点」としてしか捉えることが出来なかったのです。

はじめてのネットラジオで運命的な再会をしてからというもの、ベルリンの放送オケという放送に乗り易い職に就いていることもあり、日本での貧弱な紹介をはるかに凌ぐ多くの演奏会を聴くことが出来ました。ベルリン放送響のほかにも2000年以来兼職するモンテカルロ・フィルや、客演でNDR、デンマーク国立放送響、ピッツバーグ響(ここはトゥルトリエ、A・デイヴィスと共同で首席でしたが)、スイス・ロマンド管などなど。

聴いていくうちに凄い演奏にもいくつか当たるようになりました。かなり前のNDRとのシューマンの4番は、快速で飛ばしエネルギーの発散が凄まじく、それはもう素晴らしかった。「プラハの秋」音楽祭へベルリン放送響と訪れた「英雄の生涯」も感動的な演奏でした。
昨季のベルリンでのワーグナー・ツィクルス(「ジークフリート」第3幕、「黄昏」抜粋、「パルジファル」第3幕)など、指揮者が小粒だの散々言われたドレスデンとの録音時以上に深みを増しているようにも思われました。
「黄昏」の抜粋など、クライマックスに向けてどんどん疲労し金切声でがなり立てるブリュンヒルデ(エリザベス・コンネル)の不調に比べ、オケが実に魅力的に歌っていたのに驚いたほどです。
基本的に速目のテンポでグイグイと引き込むあたりは、昔とそれほど変わらない印象ですが、全体のスケールが大きくなり、響きの強さも十分に出て来ているように感じます。熱の帯び方も半端ではありません。

たとえばホルスト・シュタインや、ヤノフスキの師であるサヴァリッシュも、「職人的」というひとことで簡単に片付けられてきた感じが日本ではまだ強いですが、特に海外のライヴでは素晴らしく「熱い」演奏が多かったこともまた事実です。シュタインだと1970年代のバイロイト・リングからして既にそうです。そしてそれは歳と共にどんどん深みを増していったと考えます。
ヤノフスキもまだ69歳ですから、この先どうなるかは分かりませんが、日本からは足が遠のいており、CDもなかなか出ない現況を鑑みると、ただの職人、で片付けられてしまうのでしょうか。
これは大変残念なことと言わざるを得ません。

ベルリン放送響との2007/08シーズンでは、これまでドヴォルザークの8番、ブラームス4番などが取り上げられ、直近で放送されたベートーヴェン5番もオケを締め上げるかのような快速で、それでいて少しも軽さを感じない豊かで強靭な演奏には度肝を抜かれました。
また、今季はBruckner Massivと題しブルックナー・ツィクルスも行っています(昨季はこれがワーグナーだった訳です)。これまで1番、7番、ミサ曲第2番が放送され、3月中旬にはいよいよ8番、シーズンの最後に6番が予定されています。
いずれもドイチュラントラジオで確実に流れます。ドイチュラントラジオの90kbps.oggストリームは、左右逆に聞こえたり、強奏でややリミッターがかったようにも感じられますが、それが苦にならない耐性のある方は聴かれてみてはいかがでしょうか。
Secret

TrackBackURL
→http://liverecording.blog49.fc2.com/tb.php/242-828d0edf