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迂闊にも最近気付いて驚いたのですが、クリストフ・フォン・ドホナーニってもう80歳に近いんですね(1929年9月8日生まれ)。
実はドホナーニは、FMエアチェック時代はほとんど放送のなかったひとです。
経歴を見ても、ケルン放送響の首席が1960年代であまりにも古過ぎるし、後のフランクフルトやハンブルク歌劇場のポストでは、NHK-FMなどで取り上げられることはまずもってありません。
そして1984年から、在任期間を見ても蜜月と言っていいクリーヴランド管の音楽監督に就任する訳ですが、アメリカのオケはNHKはまったくやってくれず、FM横浜の方でもボストンがほとんど(若干クリーヴランドもありましたがほんのちょっと)だったので、スタジオセッションを除けばドホナーニの演奏は聴く機会自体がなかったのです。

余談ですが、1990年だったか、マズアがゲヴァントハウスと来日して、随分小粒な響きのベートーヴェンの交響曲全曲演奏会を持ちました(レオンスカヤとの皇帝等も含む)。これはBSで中継されました。
その二、三年後に同じツィクルスをドホナーニとクリーヴランドも取り上げたので、こちらとしては相当身構えて放送を期待したのに映像はおろかFMでの音さえ一切ナシ。このときはまあ、この指揮者とは縁がないんだなあと、ほぼ諦めの境地になったものです。

NHK-FMで放送された彼の演奏といえば、近年を除くとそれくらい、ほんの数えるほどしかないのです。
1974年のマーラー「巨人」ほか(ベルリン・フィル)、1980年代前半の「ツァラトゥストラ」とシュニトケの合奏協奏曲(ベルリン・フィル)、1988年のウィーン芸術週間におけるチャイコフスキー4番ほか(ウィーン・フィル)、あといくつか。なんという仕打ちでしょう。NHK-FMの海外ライヴ編成担当が嫌っていたとしか思えません。

今でこそクリーヴランドとのライヴ集成がCD自主制作盤で手に入り、ドイツへ復帰し天下のNDRの音楽監督ですから、前のエントリーのヤノフスキ並にバンバン放送が聴ける現状(ネットラジオでです)なのはとてもありがたいのですが、やはりFM時代から付き合ってきたという思い入れがない御仁ゆえに、はじめはサラッと聞き流す程度でした。
音楽の印象もそれほど熱が感じられず、さくさく進んではい終了、程度の認識。

ところが、これが間違いでした。それに気付いたのがこれまた迂闊にも今朝のNDRの放送です。
プログラムはブラームスのピアノ四重奏曲、シェーンベルク編曲管弦楽版とフランク・ペーター・ツィンマーマンとのベートーヴェンの協奏曲だったのですが、これが実に素晴らしかった。
ブラームスは1〜4番の交響曲以上に偏愛している曲で、放送頻度は少ないもののライヴでは名演が多い曲です。ラトル、ラインスドルフ、プリッチャード、エッシェンバッハ、ツェンダーなど、どれも記憶に残る演奏でした。
ドホナーニの演奏はドライな印象、と述べましたがいやはやそんなことはなく、音色の描き分けが見事な上に、細かい起伏を丹念に積み重ねて終楽章コーダで一気に爆発させる手際には本当に驚かされました。
後半のベートーヴェンも、素晴らしくよく歌うツィンマーマンに寄り添うように付けながらも、強奏の迫力は圧倒的な力を持って響き渡るのにもかかわらず実に柔らかく聴こえ美しく、さらにツィンマーマンがそれを巧みに受けタップリと歌い込んで行くという、美の連鎖がどんどん重なって行くような、まさに魅惑的な名演奏でした。

ブラームスの編曲版の演奏は、FranceMusiqueが高音質化した直後に流れたパリ国立歌劇場のオケとのものも聴けますが、これも大変な名演です。
NDRと違い客演なので他流試合的な面白さがあるのに加え、オケの音色の派手さが実にこの曲の編曲的な側面とよく合い、ライヴのノリとしてはどちらかといえば整然としたNDR以上。
後半プロの「英雄の生涯」がまたさらに熱い大演奏で、ドホナーニの凄さがよく分かりました。いや、参りました。

ドホナーニはこれまで数年の間に、ネットラジオで頻繁に流れています。
聴いたものではNDRがほとんど、ほかに客演でニューヨーク・フィル、スイス・ロマンド管、フィルハーモニア、ピッツバーグ響、イスラエル・フィル、ボストン響など。
直近だと次週3月3日のNDRでハイドンの64番に、イヴォンヌ・ネフ、そしてゲルネ(!)との「青ひげ公の城」が流れる予定です。

歳が歳ですし、オペラはもうやらないんでしょうね。それだけが心残り。例外的に「青ひげ」は演奏会形式でよく取り上げています。
CDで完成することのなかった「指環」四部作を、このひとで是非聴いてみたいものですが。
それでも、聴きたくても聴けなかった名指揮者のライヴが毎週のように聴けるとは、本当に贅沢ないい時代になったものです。

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